この規定(都市計画法第57条)が存在する最大の理由は、「街づくり事業(都市計画事業)をスムーズに進めるため、施行者(事業を行う側)に土地を優先的に買い取る機会を与えるため」です。
難しい言葉を省いて、なぜこのようなルールになっているのかを3つのステップで整理します。
1. 「事業地」が決まると、事業者は土地を集める必要がある
都市計画事業の認可が告示(お知らせ)されると、「ここを道路にします」「ここに公園を作ります」という事業の場所(事業地)が正式に決まります。
事業を進めるためには、施行者(自治体など)はその土地を地主さんたちから買い取っていかなければなりません。
2. もし地主が勝手に他の人に売ってしまうと困る
認可が出た後に、地主さんが施行者に黙って「別の第三者」に土地や建物を売ってしまうと、次のような問題が発生します。
- 地主(所有者)がコロコロ変わり、交渉が一からやり直しになる
- 買い取った第三者が「絶対に退去しない」と言い出し、立ち退き交渉が難航する
- 転売を繰り返して売買価格が跳ね上がり、事業の予算がオーバーする
このように、事業の邪魔をされたり遅れたりするのを防ぎたいのです。
3. 「売りたいなら、まず事業者に教えてね」というルール(先買いの機会)
そこで法律は、地主さんに対して「もしその土地を有償で誰かに売る(譲渡する)つもりなら、契約する前に『誰に・いくらで売るか』を書面で届出してください」と義務付けました。
届出を受けた施行者は、次のように対応します。
- 施行者が「その価格なら、うち(事業者)が買い取ります!」と手挙げした場合:第三者ではなく、事業者が優先的に買い取る交渉(先買い)ができるようになります。
- 施行者が「今は買い取らなくて大丈夫です」と判断した場合:届出をした地主さんは、予定通り第三者に売ることができます。
💡 ちなみに「10日を経過した後」なのはなぜ?
告示(お知らせ)が出された直後の「10日間」は、施行者が事業地内の土地や建物の状況を調査し、図面などを備え付ける期間です。この調査が落ち着いて手続きが本格化する「10日を経過した後」から、この売買制限・届出のルールがスタートすることになっています。
まとめ
一言で言うと、「公園や道路を作る場所の土地を、勝手に第三者に売られて事業が妨害されるのを防ぎ、事業者が優先して買い取れるようにするため」にこの届出制度があります。

予定対価の額まで届け出る必要があるのは、都市計画事業の施行者が相手方より高く買い取るためですか?
いいえ、「相手(買主)より高く買い取るため」ではありません。
施行者(自治体など)が予定対価の額まで届け出させるのは、「届出をした地主さんが提示した価格(=市場価格・本気で売ろうとしている適正価格)で、そのまま買い取るため」です。
オークションのように「相手より高値を出して競り落とす」ためではなく、むしろその逆の理由が存在します。
1. なぜ「予定対価の額」の届出が必要なのか?
主な理由は次の2点です。
① 「提示された金額」そのままで買い取るため(先買い権)
施行者が「優先して買い取る(先買い)」と手を挙げた場合、施行者は地主さんが届出に書いた予定対価の額(売却希望額)で買い取ることになります。
高値で競り勝つためではなく、「地主さんが『この金額なら第三者に売ってもいい』と納得している金額」を正確に把握し、その金額通りに買い取るために記載が必要となります。
② 「不当な高値」や「嘘の届出」を防ぐため
もし金額を書かなくてもいい場合や、施行者がいくらでも上乗せして買わなければいけないルールだと、地主さんと第三者が結託して「事業の邪魔をするために、相場の10倍のウソの金額を届出に出す」といった悪用ができてしまいます。
「実際に第三者に売る予定の具体的な金額」を届出させることで、市場の適正価格からかけ離れた不正な取引や転売を防いでいます。
2. もし施行者が「高すぎる」と判断したら?
施行者は、届出に書かれた予定対価の額を見て、「この価格は予算オーバーだな」「事業の状況的に、今この価格で優先買い取りする必要はないな」と判断すれば、買取りを辞退(協議を成立させない)することができます。
買取りを辞退された地主さんは、届出通りに第三者へその金額で売却することができます。
まとめ
予定対価の額を届け出させるのは、「第三者に売るはずだった『そのまんまの条件(金額)』で、施行者が横入りして優先的に買い取る権利を行使するため」です。高く競り勝つためではなく、地主さんの売却希望額でスムーズに事業用地を確保するための仕組みになっています。
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