この判例は「転借人は気の毒だけれど、法律上は賃貸人がそこまで面倒を見る義務はない」という考え方に立っています。
登場人物を整理して考えてみましょう。
- A:賃貸人(大家)
- B:賃借人
- C:転借人(Bから又借りしている人)
関係は次のようになります。
A(大家)
│ 賃貸借
│
B(借主)
│ 転貸借
│
C(転借人)
例えば、
- AがBにマンションを貸している。
- BはAの承諾を得て、その部屋をCに転貸している。
- しかしBが何か月も家賃を払わない。
Aとしては、
「Bさん、家賃を払ってください。」
と催告します。
それでも払わなければ、
「契約を解除します。」
となります。
では、Cは困りますよね?
そのとおりです。
Cは
「私がBの代わりに払います!」
と言える機会があれば助かるかもしれません。
しかし判例は、
AはCにまで『払いますか?』と聞く義務はない
としています。
つまり、
- Aが催告すべき相手は契約の相手方であるB
- Cは契約の当事者ではない
という考え方です。
なぜそんな結論になるの?
理由は、
家賃を支払う義務を負っているのはBだからです。
Aと契約しているのはBであり、AはBとの契約を解除したいだけです。
もし、
「転借人にも毎回支払う機会を与えなければ解除できない」
となると、大家に過大な負担を課すことになります。
そこで、
催告は契約相手のBだけで十分
とされています。
では、Cはまったく保護されないの?
完全に保護されないわけではありません。
例えば、Aが解除する前であれば、一定の場合にはCがAに対して賃料を支払うことで問題を解決できる場面もあります。
ただし、この判例が言っているのは、
Aはその機会をCに与えなければならない義務までは負わない
ということです。
試験ではこう覚えると混乱しません
「催告の相手」と「不利益を受ける人」は別です。
- 催告すべき相手 → 賃借人B(契約当事者)
- 解除によって影響を受ける人 → 転借人C
つまり、
転借人は解除で困るが、だからといって催告を受ける権利まではない。
これが判例のポイントです。
このテーマは宅建士試験でもよく問われるので、「解除前なら転借人は賃料を支払って賃貸人に対抗できる場合がある」という判例との違いまで整理すると、さらに理解しやすくなります。

つまり、この判例は、大家を保護しようとしているのですね。
はい、その理解で大丈夫です。
ただし、より正確には「大家だけを保護する」というより、契約当事者を基準に法律関係を整理しているという考え方です。
この判例では、
- A(大家)と契約しているのはB(賃借人)
- C(転借人)は、Aとは直接契約していません(転貸借契約の相手はB)
そのため、Aは契約相手であるBに対して催告すれば足りる、とされています。
もしAが、
- Bに催告し、
- さらにCにも支払いの機会を与え、
- 他にも転借人がいれば全員に通知し…
という義務まで負うと、Aの負担が非常に大きくなってしまいます。
そこで判例は、
解除の手続は契約当事者であるBとの関係だけで足りる。
としています。
試験対策としては
この判例を見たら、
「催告の相手は契約当事者(賃借人)だけでよい。転借人に支払いの機会を与える必要はない。」
と覚えるのがポイントです。
一方で、転借人がまったく保護されないわけではありません。 転借人には別の場面で認められる権利もあります。試験では、それらのルールとこの判例を区別して出題されることがあります。
ですから、「大家保護」という側面はありますが、それ以上に「契約はまず契約当事者を中心に考える」という民法の基本原則が表れている判例と理解すると、他の論点にも応用しやすくなります。
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