関西方式(大阪方式)は違法ではありません。
宅建試験(民法)で登場する「敷金返還債務の移転」の原則と、商慣習である「関西方式」は、法律上のルールと売買当事者(前オーナーと新オーナー)間の契約内容という異なるレイヤーの話であるため、矛盾せず両立します。
1. 法律上のルール(宅建試験の〇の理由)
民法605条の2第4項などの規定により、賃貸建物の譲渡に伴って賃貸人の地位が新オーナーへ移転した場合、敷金返還債務は法律上当然に新オーナーへ承継されます。
これは「賃借人(借主)を保護するため」の原則です。借主から見れば、オーナーが勝手に変わったとしても「退去時には現在のオーナー(新オーナー)から敷金を返してもらえる」という権利が法律によって保障されています。
2. 「大阪方式(関西方式)」の実務とからくり
大阪をはじめとする関西エリアでは、不動産売買の際に「売主(前オーナー)から買主(新オーナー)へ、預かり敷金の現金を直接引き渡さない(精算しない)」という商慣習(いわゆる大阪方式)が存在します。
ここで「新オーナーは敷金をもらっていないから返さなくていいのでは?」と思いがちですが、法的な帰結は異なります。
大阪方式における売買金額の調整
前オーナーから現金の受け渡しがなくても、新オーナーは「将来、借主へ敷金を返還しなければならない義務(債務)」を一緒に引き継いでいます。
そのため実務上は、敷金返還義務の負担分を見越して、売買価格(物件本体の価格)をあらかじめ安く設定して売買契約を結びます。
- 関東方式(通常の精算):物件価格 5,000万円 + 敷金受領分 200万円精算 ⇒ 新オーナーへ現金200万円を渡す
- 大阪方式(敷金持ち回り・引き継ぎ):将来200万円の敷金返還義務を新オーナーが負う代わりに、物件価格を最初から 4,800万円 に値引きして売買する
このように、新オーナーは「物件を安く買う」ことによって実質的に敷金相当額の補填を受けているため、現金の直接移動がなくても損はしていません。
3. なぜ違法にならないのか?
法律(民法)における関係整理は以下のようになります。
- 対 賃借人(借主):大阪方式で売買されたかどうかに関わらず、借主に対して敷金を返還する義務を負うのは新オーナーです(民法の規定どおり)。新オーナーが「前オーナーから敷金を受け取っていない」という理由で借主への返還を拒むことはできません。
- 対 オーナー同士(売主と買主):売買契約において「敷金の現金をどう精算するか(価格に反映させるか、直接受け渡すか)」は、当事者間の契約自由の原則に委ねられています。
したがって、大阪方式は公序良俗や強行法規に違反するものではなく、法的にも有効な商慣習として認められています。
まとめ
- 宅建試験の知識: 借主との関係では、敷金返還債務は当然に新オーナーへ引き継がれる。
- 大阪方式の実務: 新オーナーは現金を直接受け取らない代わりに、敷金分だけ物件を安く買い受けることで実質的にバランスを取っている。
- 結論: どちらの場合も「退去時に借主へ敷金を返さなければならないのは新オーナー」であり、大阪方式は違法ではありません。
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