「宅建業者が自ら売主となる売買契約の締結に際して手付金を受領したときは、売主が契約の履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄して契約の解除をすることができ、これに反する特約で買主に不利なものは無効となる(宅建業法39条2項、3項、判例)」について、「売主が契約の履行に着手するまでは、」とは具体的にどんな場合ですか?

ここでいう**「売主が契約の履行に着手するまでは」**とは、

売主が、売買契約で負っている義務(所有権移転・引渡しなど)の履行を、客観的に見て実際に始めたといえる段階まで

という意味です。

最高裁判例(昭和40年11月24日)は、「履行の着手」を次のように定義しています。

債務の内容たる給付の実行に着手すること、すなわち、客観的に外部から認識できる形で履行行為の一部を行い、又は履行の提供に欠くことのできない前提行為をした場合 (不動産流通推進センター)

具体例

売主については、例えば次のような行為が「履行の着手」に当たります。

① 所有権移転登記の準備を実際に始めた

例えば、

  • 司法書士に登記申請を依頼した
  • 登記に必要な書類を司法書士へ交付した

などです。

実際に裁判例では、売主が抵当権抹消書類を司法書士へ交付した時点で履行の着手と認められました。したがって、その後は買主は手付放棄による解除ができませんでした。 (公益社団法人 全日本不動産協会 –)

② 引渡しのために必要不可欠な準備を行った

例えば、

  • 建物に付いている賃借人を退去させる(引渡し義務を履行するため)
  • 契約上負担している抵当権などの負担を消除するための具体的手続を開始する

これらも、売主の契約上の義務を実現するための行為なので、履行の着手となる可能性があります。 (北海道宅建協会)


逆に、履行の着手とはいえない例

まだ単なる準備段階にすぎないものは、通常は履行の着手ではありません。

例えば、

  • 社内で書類を作成しているだけ
  • 引渡しの日程を考えているだけ
  • 漠然と準備しているだけ

このような行為だけでは、「客観的に履行を始めた」とはいえません。 (不動産流通推進センター)


宅建試験ではこう覚えると便利

試験対策では、

「履行の着手」=単なる準備ではなく、契約上の義務の実行を外部から見て開始したこと

と覚えるのがおすすめです。

例えば、

  • ○ 司法書士へ登記書類を渡した
  • ○ 引渡しのために賃借人を退去させた
  • × 社内で書類を作っているだけ
  • × 引渡しの予定を立てているだけ

という区別が典型です。

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