宅建試験の問題で「賃借人が適法に転貸したときは、転借人は賃貸人に対しても賃料支払債務を直接に履行する義務を負う。その額は賃借料と転借料とを比較して低い方である。正解(〇)」とあります。賃貸人(オーナー)は、低い方しかもらえないというのは理不尽ではありませんか?賃借料よりも転借料が低い場合は、本来想定していた家賃(賃借料)よりも少ない転借料としたまま、転借人に課し続けなければならないのですか?

結論からお伝えすると、オーナー(賃貸人)が損をするわけではありません。

転借人が「低い方の金額しか支払う義務がない」としても、差額は元の借り手(賃借人)に全額請求できるため、オーナーが本来もらえるはずの家賃(賃借料)が減ることはありません。

なぜ法律がこのようなルールにしているのか、その理由と仕組みを解説します。

1. なぜ「低い方」に限定されるのか?(二つの理由)

このルールのポイントは、「転借人(孫借りしている人)」の立場と権利を守るためにあります。

① 転借料の方が低い場合(転借料 < 賃借料)

  • 例: オーナー ⇔ 賃借人(10万円)/ 賃借人 ⇔ 転借人(8万円)
  • 転借人の立場: 転借人は「毎月8万円で借りる」という契約を結んで入居しています。それなのに、面識のないオーナーから突然「10万円直接払え!」と言われたら、契約以上の金額を背負わされて踏んだり蹴ったりになってしまいます。
  • 法律の理屈: 転借人が直接支払う義務を負うのは、自分が契約した「8万円」が限度です。

② 賃借料の方が低い場合(賃借料 < 転借料)

  • 例: オーナー ⇔ 賃借人(10万円)/ 賃借人 ⇔ 転借人(12万円)
  • オーナーの立場: オーナー自身が結んだ契約の家賃は「10万円」です。
  • 法律の理屈: オーナーは転貸(サブリース等)されたからといって、本来の契約以上の「12万円」を転借人から直接受け取る権利(不当利得)はありません。そのため、もらえるのは本来の契約額である「10万円」までとなります。

2. オーナーは損をしない(差額の回収方法)

転借料の方が低いケース(例:賃借料10万円・転借料8万円)で、オーナーがどうやって全額回収するのかを見てみましょう。

  1. オーナーは、転借人から直接「8万円」を回収する。
  2. 不足している差額の「2万円」は、元の賃借人(転貸した人)に請求して回収する。

こうすることで、オーナーは合計10万円を問題なく回収できます。

3. なぜ「直接払え」と言える権利があるのか?

そもそも、オーナーと転借人の間には直接の契約関係はありません

本来なら「転借人は賃借人に払い、賃借人がオーナーに払う」のが筋ですが、賃借人が家賃を滞納して失踪したりした場合、オーナーは家賃を回収できなくなってしまいます。

そこで民法は、「オーナーを保護するために、特別に転借人へ直接請求できる権利(民法613条)」を認めました。

ただし、「いくらオーナー保護のためとはいえ、転借人に契約以上の負担をさせたり、オーナーが本来の契約以上に儲けたりするのはダメ」ということで、「低い方の金額を限度とする」というバランスを取っているのです。

まとめ

  • 転借人が払う額: 「賃借料」と「転借料」の低い方(転借人を守るため)
  • オーナーの総回収額: 差額を賃借人に請求できるため、本来の賃借料を全額回収できる(オーナーも損をしない)

「転借人への直接請求は『低い方』が限度になるけれど、足りない分は元の賃借人からもらえば良いんだな」と理解しておくと、理不尽さが解消されると思います!

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